大阪府と大阪市、堺市が共同で、無料通信アプリ「LINE」を使った児童虐待防止のための相談受付を2020年6月25日から7月31日までの37日間、府内在住のこどもと保護者を対象に、来年度の本格実施にむけた効果検証として試行実施されました。
当協会は、受託事業者(エースチャイルド株式会社)から再委託され相談業務を受託しました。受託決定から僅か1か月半余りで、相談室の開設、相談員の確保と研修等急ピッチで準備を進め、スーパーバイザー8名、相談員50名、事務局2名の相談体制を整え、初日を迎えました。
当初計画は7月の1か月間でしたが、コロナによる学校休業中のこどもたちのケアのため、急遽1週間前倒しで実施することになりました。当協会には長年の電話相談業務の実績があり、相談員も多数在籍していたため短期間での準備が可能になったと思います。
慌ただしく迎えた相談受付開始前日、吉村洋文大阪府知事が定例記者会見でコロナ対策に次いで2番目の話題でLINE相談開設を発表されました。その反響はすさまじく、6月25日初日は494件の相談アクセスがありました。最終日の有効友だち登録数5,344名、期間中の相談件数3,505件(1日平均約95件)、子育ての悩みから家庭での不安、学校や職場のことなど幅広く様々な相談が寄せられました。
相談の半数はこども。LINEがこどもたちの身近なコミュニケーションツール(注)であることを実感させられると同時に、「相談する」ことのハードルを下げるとの確信を得ました。事後のアンケートからも「LINEで相談できるようになったら相談したいと思っていた」13%、「LINEなら相談できるかも…と思った」39%と、回答者の半数以上がLINE相談の手軽さをあげています。
アカウント名でやり取りするため匿名で出来る、いつでもどこでも時間や場所の制約を受けず開始できる等、手軽さから初期段階の相談に適していることも見えてきました。親から酷く怒られると発したこどもとのやり取りから、親の虐待の存在を察知し児童相談所に連絡できたケースもありました。
こどもが安心して相談できる場所になる。今回の事業受託を通して、従来の窓口や電話、メールといった相談受付方法からLINE等SNS相談受付へ、今後シフトしていくことを感じつつ、何よりもこどもたちにとってより相談しやすいツールであり、より安心できる相談窓口となるよう、更に実践と検証をすすめていきたいものです。
(注)こどものスマホの利用率は、1歳で19.2%、3歳で50.2%、5歳で60.5%、9歳で8割。(2019年度内閣府「青少年のインターネット利用環境実態調査」)
島田大作(関西こども文化協会 LINE相談担当)